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黒沢清『CURE』

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KADOKAWA / 角川書店
¥ 2,271
(2016-03-25)

久々に観る黒沢清『CURE』はなんとも言い難い映画として映った。私にとってのオールタイム・ベストに本作が位置づけられ得ることは間違いがない。しかし、傑作と手放しで呼ぶのも躊躇われるような作品に感じられたのだ。それはこの映画に触れた 90 年代と今が違っているからかもしれない。私はもちろん『CURE』以降の黒沢清作品を観ているし――『散歩する侵略者』は例外――当時と今で世界観/価値観が変わってしまったから、というのもあるのだろう。

 

川崎公平『黒沢清と〈断続〉の映画』という本を読もうと思って復習のために観たのだけれど、観直してみるとかなり骨太な映画であることが分かる。シンプルに、少し語り過ぎていないくらい不親切にストーリーは語られる。刑事の役所広司氏も催眠術師の萩原聖人氏も、そのバックグラウンドが全然描かれていない。何故刑事は病身の妻を抱えて苦労するのか? 何処から彼は催眠術師になったのだろうか? 等など。そうした説得力や厚み/膨らみをもたらすと考えられる必要最小限の説明すらも放棄して、スジはホラーへ向かう。

 

火と水の際立ちが印象に残った。火に関しては言うまでもないだろう。萩原聖人氏が持つライターの炎や彼が住み込みでバイトしていた工場の炎に、あるいは銃から放たれる火花にそれは現れる。だが、水に関しては盲点だった。洞口依子氏が見つめる水や役所広司氏のライターの炎を消す(!)雨水、いやそれ以前にストーリーの冒頭近くで展開される砂浜が水のある場所であることなども興味深い。そして肝腎の脱走も雨が降った日に行われるのだ。

 

そして、正面からこちらを捉えた場面も多い。こちら(つまりディスプレイを見ている私)を見つめる登場人物……彼らは時に横に移動する。正面から見つめる視線と横に移動する登場人物は、その視線や行動だけで「十」を描いていないだろうか。これを斜めに倒せば呆気なく「X」が完成してしまう。この符号も面白い。ラストのウェイトレスの歩行の軌跡も「十」を描いている。つまり「X」。

 

むろん、ここまで黒沢清監督が計算したわけではないのだろう。全ては私の勝手な妄想とこじつけに過ぎない。しかし、ここまで想像力を広げさせられるこの映画の刺激は改めて凄いものだと思った。その不親切さを純粋にホラーとして、つまりこちらに真っ直ぐ登場人物がやって来る迫力を味わわせる類のものとして(役所広司氏や大杉漣氏などは「真っ直ぐ」こちらに歩いて来る)味わうか、それとも単にぶっきらぼうなものとしてのみ捉えるか、賛否は割れるところだ。

 

いや、なかなか興味深い映画を観てしまったものだ。今から二十年前のこの映画を観て以来、自分は変わったのだろうか? そのあたりまだふわふわしたものを感じてしまう。


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